未来の消費者目線(ビジネスの源泉)

◆日本の環境・SDGsへの意識は、今後他国に急速にキャッチアップすると予想

 MMD研究所の2023年2月の調査「日米仏3ヶ国比較:都市部消費者の食の意識・動向調査 第3弾 ~エシカル消費編~ 」の結果(以下 抜粋)を見ると、日本のSDGs、環境に関する意識はアメリカ・フランスに大きく溝をあけらている。しかし、少なくとも京都府、京都市については、目に見えて環境教育、SDGs教育が盛んに行われてきており、また日本にも脱炭素に向けた目標設定等も行われ、日本各地で脱炭素先行地域の選定なども行われていること等を合わせると、今後数年の間に、アメリカ・フランスへのキャッチアップは急速に進んでいくことが予想される。

  • フェアトレード製品を購入するように心がけている 日本7.0%、アメリカ12.6%、フランス26 .1
  • 食品や製品購入時にエコ関連の認証マーク付きであるかどうか確認する 日本4.9%、アメリア17.2%、22.7%

  では、実際に消費者はこれからどのようなことを学んでいくのでしょうか。当方は同時に京エコロジーセンターでの環境ガイドボランティアも担っており、環境省の方針、環境NGO等からの情報に触れる機会もあるため、今後消費者がどのようなことを学び、どのような視点を得ていくのかについて、以下に示したい思います。以降、脱炭素だけではなく、「環境」「サステナビリティ」全般に枠を広げたお話が含まれますことご容赦ください。

◆未来の消費者は、何を学んでいくのか

1.地球温暖化関連の学び

  • 人が化石燃料を使いだした産業革命から徐々に世界の平均気温は上がりはじめ、現時点で約+1.1℃の状況
  • このまま何もしなければ、地球の平均気温は産業革命から+5.7℃まで上昇するといわれる。
  • 平均気温の上昇は、干ばつ、豪雨の頻度を上げ、感染症リスクの増大、食料・水の不足、海面上昇をはじめとしてさまざまな危機的な状況を引き起こす。
  • 産業革命前に比べて世界の平均気温が+ 1.5℃を超えてしまうと、気温上昇が抑えられなくなり、 「後戻りできない状況」に陥ると言われており、この10年の取り組みで未来が決まると言われている。
  • パリ協定で決められた産業革命に比べて世界の平均気温を+1.5℃に抑えるためには2030 年までに 2010 年比で CO2 排出量を約 45 %削減する必要があり、さらに2050年にはカーボンニュートラルをめざす必要があるとされている。
  • 地球温暖化の原因といわれる増えすぎた二酸化炭素を削減には、クリーンエネルギーへの転換省エネゴミ削減、すべての物の資源採取、製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでのエネルギーの削減など様々な取り組みが必要。

2.グリーンコンシューマー、エシカルコンシューマーの視点の学び

(1)基本的な視点

  • 資源採取、製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでの各工程に、かかっているエネルギーや他の生き物への影響、出てくるゴミなどを想像して商品を選択する。※完璧なものはなかなかないこと、正確な評価は難しい部分もあるため、一定の判断基準を自分の中で築いていくこと、他社と議論し知見・判断基準を確立していくことも必要
  • 企業によっては、あえて不利なことは言わない場合や環境・SDGs配慮に熱心だと見せかける「グリーンウォッシュ等」と疑われる場合もあるため、イメージにとらわれず、事実を見る、惑わされない知識を身につけることが必要 例:資源採取、製造、流通、使用、廃棄、リサイクルまでを想像したときに、対応が容易な一つの要素だけの対応を進め、全て解決したように宣伝しているケースには注意

(2)商品を選ぶ視点

 ①3R

  • サステナブルに経済活動を進めていくため、「3R」という言葉は有名となったが、ごみからのCO2排出も無視できないことと、最終処分場の枯渇問題と環境負荷という観点から、各行政は、「3R」を推進しており、中でもリデュース、リユース、リサイクルという順序で優先順位を決めている。
  • リデュースは、ゴミを減らすことだが、「包装」や可能な限り「使い捨ての製品」を減らしていく取り組みが3Rの中で最も重視される。
  • リユースは、一度使ったものをそのまま他者に譲渡・販売し再利用すること。リユースは、製造・廃棄・輸送エネルギーの削減や、物を大事にするという倫理的な観点で非常に重要であるが、車や空調設備等で省エネ性能が飛躍的に進化してるものについては、脱炭素を目的にした場合、使用時のエネルギー削減という観点で、より省エネなものに設備更新をしていく判断も必要になってくる。
  • リサイクルについては、「リサイクルをすればすべて環境に良い」という考え方が広がっているが、実際にはリサイクルに多くのエネルギーが必要となり、CO2排出を伴うために3Rの中では優先順位が一番低く設定されている。また、リサイクルにも段階があり、同じ製品から同じ製品などに生まれかわらせるクローズドループリサイクルや、性質の劣化や変化を伴うが素材として再利用するカスケードリサイクル、廃棄物を燃やした熱を回収し電力や温水に利用し、物質自体は焼却灰となり最終処分場に埋められるサーマルリサイクルがある。なお、カスケードリサイクルについても元の素材に戻ることはなく、最終的には最終処分場に埋められる形となる
  • 公表されているリサイクル率には、前述のサーマルリサイクルを含めた率が公表されていれる場合があるため注意が必要。なお、環境省等はサーマルリサイクルを加味しない形でリサイクル率を算出している模様
  • 資源の枯渇も予想されるものや、最終処分地の枯渇問題もあるため、リサイクルの中でもクローズドループリサイクルを推進していく必要がある

②認証マーク

 環境やSDGsに関して配慮度合を一定の条件にて認証し、可視化するために様々な認証マークが存在する。基本は認証マークを取得していない商品より、認証を得ている商品の方が環境配慮をしているということで、商品選択時の判断に生かしていくという考え方でよいとは思うのもの、マークによっては評価範囲が一部重複していたり、配慮する範囲(資源採取、製造、流通、使用・廃棄リサイクル、資源消費面、エネルギー消費面、大気・水土壌への汚染物質排出、廃棄物、有害物質利用、生態系の破壊、その他)が異なっていたりするため、マークの評価範囲、基準などを確認しながら、商品を見定めていく必要がある。一例として以下を挙げるが、環境省に「環境ラベル等データベース」が準備されており参考いただきたい。

【認証マークの一例】

   ※国際フェアトレード認証以外のマークは、環境省に「環境ラベル等データベース」で詳細が確認可能

③地産地消、旬のもの    

 地域のものを地域で消費するということは、輸送のエネルギーが低減でき、地域活性にもつながるという観点から、野菜、魚等の食物を中心に広がる取り組み。屋根上太陽光発電などもエネルギーの地産地消という側面がある。また旬のものを消費するということは、例えば夏が旬であるトマトを冬に作るために、夏の気温を再現すべく灯油を使うというように、普通に育てるよりも10倍程度のエネルギーが必要ということから、CO2排出量削減に向けて推奨される取り組み

④オーガニック(有機)

 オーガニック(有機)というのは、誤解も多いかもしれないが、土の中における「いきもの」のつながりを活用した自然な生育環境で育てた野菜・作物等で製造した製品をオーガニック●●、有機●●という呼び方をする。これまで生産性を重視するために、作物を育てるときの肥料は、化学肥料と農薬をセットで用いることが多かったが、安全安心な食の観点、土の中のいきもののつながりを壊してしまうことに起因して起こる土の劣化の観点、農場の周りの水質の観点、有機農法を通してしか得られない栄養素の観点などで、持続可能に農業を進めるためには重要とされている。

⑤その他の視点

 3.4.5.6.項記載の一般的な電気、ゴミ、水、森林、生物多様性などに関することも消費者はどんどん学んでいる。その視点も合わせて注意することが必要。製品を作るための電気をはじめとするエネルギーの脱炭素化はこれからは特に重要

(3)企業を選ぶ視点

 本来なら各企業ごとの環境・SDGsへの配慮実態を確認するには、取り組みの中身を詳細に調査していく必要があるが、わかりやすいのは、今最も急ぐべき地球温暖化という問題に対して、世界情勢を自らキャッチしていち早く取り組む姿勢を掲げている以下のイニシアチブ等参加企業は、一定の条件をクリアしていると判断がなされる。このようなイニシアチブへの参画を検討してみるのもよいだろう。競合他社、関連企業の参画状況などをチェックすることで、今後どのように動いていくかの見定めにも活用できると思われる。以下に脱炭素等に向けた代表的なイニシアチブを示す。

イニシアチブ名概要参加企業、または一覧を含むURL
JCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)持続可能な脱炭素社会実現を目指す企業グループhttps://japan-clp.jp/
TCFD賛同企業気候変動に関する財務情報開示を積極的に進めていくという趣旨に賛同する企業 https://www.fsb-tcfd.org/supporters/  ※英語での検索が必要
SBIイニシアチブ認定取得企業世界の平均気温の上昇を1.5度に抑えるという目標の達成に向けて科学的知見と整合した目標(Science-based target)を設定し認定された企業https://www.wwf.or.jp/activities/basicinfo/409.html
RE100加盟企業事業を100%再エネ電⼒で賄うことを⽬標とする企業連合https://www.there100.org/re100-members ※英語での検索が必要
再エネ100宣言
Re Action
遅くとも2050年迄に使用電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表している企業等https://saiene.jp/latesttarget
EV1002030年までに事業活動での移動を100%電気自動車(EV)にすることを宣言した企業グループhttps://www.theclimategroup.org/ev100-members
EP100事業のエネルギー効率を倍増させること(省エネ効率を50%改善等)を目標に掲げる企業が参加する国際企業イニシアチブ大和ハウス工業株式会社 日本電信電話株式会社 大東建託株式会社オムロン株式会社の4社

 

3.電気に関する学び

  • 日本の電気は、70%以上が石炭火力発電により作られている作るほど、使うほどCO2が発生してしまう。
  • CO2排出量を減らすには、使用量を減らすことと、太陽光発電、風力発電などのCO2排出が少ない発電方式に変えていくことが必要
  • 家庭の電気をCO2排出が少ない発電方法に変えるには、自家に屋根置き太陽光を導入するか、太陽光発電、風力発電などを主な発電方法としている電力会社、契約メニューへの変更するという大きく二つの方法がある。
  • 屋根置き太陽光発電は、山林を壊すことなく地産地消で電力が得られるということで、東京都や京都府においては義務化を含めて積極的な推進が行われている。家庭における電気由来のCO2排出量を一気に低減できる。
  • 太陽光発電、風力発電などを主な発電方法としている電力会社、契約メニューに変更は、簡単な申し込みだけで移行でき、家庭における電気由来のCO2排出量を一気に低減できる。
  • 発電方法の転換に加えて、省エネも重要家庭での電気の使用量の多い家電の順位は、1位エアコン14.7%、2位冷蔵庫14.3%、3位照明13.5%、4位テレビ9.4% ※全国地球温暖化防止活動推進センター2019年度調査
  • エアコンはここ5年程度で4位から1位にランクアップ。石油ストーブなどがエアコンに置き換わった、各部屋でエアコンを使うようになったなどが考えられる。最近の省エネ型、高効率型のエアコン(ヒートポンプ式等)では、灯油を用いた冷暖房器具や電熱ストーブなどよりも高効率な空調効果が得られるため、冷暖房設備は省エネ型、高効率型のエアコンへ切り替えていく方がよいとされる。また各部屋でエアコンを複数台稼働させるより、家族が集まって1箇所でエアコンを使用することも省エネにつながる。
  • 冷蔵庫は、冷蔵庫外の温度にかかわらず、温度を一定に保つという多くのエネルギーを必要とする仕事を、24時間365日続けているということもあり電力消費量が多くなる。省エネに向けては、冷蔵庫には詰めすぎないこと、開閉を最小限にすること、根菜類は冷蔵庫にいれなくても大丈夫なので冷蔵庫に入れるものを選別するなどがエコにつながる。また逆に冷凍庫は詰めて入れる方がエコにつながる。そして、冷蔵庫を買い替えるときは、エアコンと同様に、買い替えのタイミングには、省エネ型、高効率型のもの選択して買い替えるということがエコとなる
  • 照明はLEDへの切り替えがおすすめされているとともに、やはり使用時以外は確実に消灯することが重要。
  • テレビも不要な時は電源OFFが重要。
  • また、全体を通して、エネルギーは製造、輸送、使用、廃棄でかかるエネルギーの合算で考えるため、その点を踏まえて、多少、一人ひとりの行動に差異が出たとしても、それらを意識して各自が行動することがよいと考えている。

4.ゴミに関する学び

(1)プラスチック

  • 道端に落ちているコンビニの袋、車のタイヤカスなどが風に吹かれ、川から海に運ばれる量は、世界で年間800万t(日本人全員の体重を足しても足りない重さ)
  • 2050年には魚よりも多くなると言われている
  • 魚は餌と間違えてプラスチックを食べて、栄養が得られず餓死するなど、海のいきものを傷つけて続けている
  • 風や波で砕かれちいさくなったマイクロプラスチックは、魚などを食べることで、人間も1週間でクレジットカード1枚分を食べている
  • できることとして、マイバック、マイボトルを持とう使おう!プラスチック包装の少ないものを選んで買う

(2)品ロス

  • 世界から途上国に送られる食糧支援は年間300万t
  • 日本の食品ロスは年間522万tと、恥ずかしい状況
  • 食べきれる量を買う手前どりをする賞味期限切れはまだ食べられる

(3)その他ごみ全般

  • ゴミを燃やすと灰となり、灰を埋める場所が必要となる。灰は最終処分場(埋め立て地)に埋められる。
  • 最終処分場は巨額の費用をかけて、山(自然)を切り開いて作られ、埋め立てが終わってもすぐにもとの自然に戻るわけではなく、水質管理などを長年継続する必要がある。環境負荷の面でも費用の面でも非常に負担が大きい。さらに、最終処分場は、立地的に制約も大きいため、なかなか新設が難しいこともあいまって、京都市の最終処分場もあと50年で枯渇すると言われている
  • CO2排出量削減、今ある最終処分場の重用のためにも、2(2)①項記載のリデュース、リユース、リサイクルの優先順位で実施する3Rの推進 、食品ロス低減によるゴミの減量が必要

5.森林に関する学

  • 森林は、CO2を吸収し、酸素を作り出してくれる
  • 木などの植物は、自由に身動きできない状態で自らの身を守るためにフィトンチッドという防御物質を放出する。空気をキレイにする効果と、人にとっては森林浴効果をもたらす。
  • 木の根っこ付近の土はイオンを帯び、空気中の汚れを含んだ雨をキレイにし、川にきれいな水をはぐくんでくれる
  • 森林で生活するいきものの輪を通して生まれた養分は川の魚、海の魚を育てる
  • 今、1週間に東京都の面積に相当する天然林が人間の手で伐採され消失しており、脱炭素の視点でも非常に危機的状況。
  • また過去より、人がいることで生態系を保ってきた市町の近くの人工林は、人が森林から離れ間伐等のメンテンナンスを行わなくなったことで荒廃し、CO2吸収量は低下し、生態系は乱れ保水力も低下し、倒木や豪雨時のがけ崩れなどを引き起こしている。人工林は間伐などを継続的に行うことですべてが好転する。間伐材の利用促進が重要となってくる。

6.生物多様性に関する学び

  • 物多様性は、過去50年で68%も減少したとされ、危機的状況にある。
  • いきもののつながりの一角が消滅すると、食物連鎖等の関連性を持つ種も連鎖的に消滅していく
  • 生物多様性の世界は、奥が深く、科学で解明されていない部分も多いため、一度消失したいきもの同士のつながりは復元が難しく、ひとたび人の生活に関連するいきもののつながりが消失していくと、食料危機、医薬品等の原料の不足などを引き起こす可能性もある。
  • 人間の経済活動が起因となっている気候変動も生物多様性消失の大きな要因となっている。
  • 人間だけで地球上で生きていると錯誤しがちであるが、食べるための作物を育てるという行為にも、ミミズ、ミツバチをはじめとする多くのいきものが関与している。
  • 生物多様性保全は、気候変動抑止続可能な資源の利用(過剰利用の抑止)絶滅危惧種保護里山保全などの取り組みを継続して効果的に実施していく必要がある